メシエ天体

本ページでは、WASA天文Pro.のメンバーがメシエ天体(・NGC天体)について一つ選んで皆さんに紹介していきたいと思います!

メンバーが書いてくれる紹介文がある程度まとまってきたらリンクで該当ページにとべるように設定しようと思います!

メシエ番号 名称
M1 かに星雲

(とにかくメシエ天体の素材が欲しいです… 😥 )

第一弾は、まずメシエ天体の一番最初にくる天体であるM1について、頼れる相対論兼勉強班班長のえーさんが書いてくれました!

以下本編です。


どうもこんにちは、38thえーさんこと熊坂です。先輩方が引退して勉強班でも班長を任されることとなりました。頑張って活動していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

さて、本日はメシエ天体の紹介第一弾ということで、かに星雲ことM1という天体を紹介したいと思います。え?メシエ天体って何かって?

 

夜空をふと見上げると星座になるような輝く星が目につきがちですが、宇宙にあるのは星ばかりではありません。メシエ天体とはメシエカタログと呼ばれる天体のカタログに掲載された天体たちのことです。18世紀にシャルル・メシエという天文学者が彗星を探している際に、彗星と紛らわしい天体をリストアップしていったのがその始まりです。そのため、メシエカタログにはメシエさんが見つけ、記録していった順に天体が掲載されており、死後記録されたものも含めて110の天体が登録されています。カタログには星団や星雲、銀河など肉眼で見ると白くぼんやりとした見た目の天体が並んでいます。当時の望遠鏡は口径の大きくない小型のものだったようなので、現代の小型の望遠鏡でも見つけることができるとあって天体観測を始めたばかりの人でも楽しめる絶好の対象です。

 

ということで、改めて本日はメシエカタログの一番目、M1をご紹介します。突然ですが問題です。下の画像には何座が写っているでしょうか?また、この画像の範囲内にM1が存在するのですが(写真は広角で露出時間も短いため全く写っていませんが)、それはどこにあると思いますか?

ちなみにこの写真は私が昨年の12月に栃木県は戦場ヶ原で撮影したものです。全天快晴でとても星が見えてうれしかったですが、非常に寒かった…。防寒対策は大事ですね。さて、答えはこんな感じです。

画像にはおうし座やぎょしゃ座、ふたご座といった冬のダイヤモンドを構成する一等星を含む星座が写っていました。英雄オリオンのこん棒と弓も下に見切れていますね。上部にはペルセウス座とやまねこ座なんて星座もあるようです。いくつ見つけられましたか?本題、M1はおうし座の角の先端すぐ近くに存在します。このM1を撮影した(Y先輩の)写真がこちら。

中央のもやのようなものがM1です。よく見ると赤い筋のようなものが見えたりと、複雑な構造であることがうかがえます。この筋のような構造がカニの脚のように見えたことからかに星雲(Crab Nebula)と名づけられました。ちなみに、むしろパイナップルのように見えると主張する人々もいたようです。あなたは何に見えたでしょうか?このかに星雲は暗く小さいため、観察や撮影は少し大変です。ただでさえぼんやりとして見つけにくいのに、視等級は8.4人間の裸眼の限界が(良い条件でも)およそ6.0とされていますから、裸眼で見つけることはまずできません。そのため望遠鏡を使って探すことになりますが、その大きさは7’×5’ほど。これがどれくらいの大きさかというと、満月と比べたらわかりやすいでしょうか。

満月は空に向けて手を伸ばした時の爪くらいの大きさですから、なかなか見つけ出すのは大変です。私もいつか撮影してみたい…。

 

ところでこのかに星雲、正体はいったい何なのでしょうか?

 

かに星雲は超新星残骸と呼ばれる天体の一種です。(ちなみに、夜空に超新星残骸と呼ばれる天体はたくさんありますが、メシエ天体の中で超新星残骸はこのM1だけです。)夜空に輝く恒星は水素などのガスが集まって出来ており、中心部で核融合反応が起こることで膨大な量のエネルギーを生み出し、光り輝いています。しかしながらこの核融合反応はいつまでも続きません。太陽の8倍より重い星はおよそ数百万~数千万年で燃料を使い果たし、核融合をやめてしまうことが分かっています。もはや自ら光ることのできなくなった星は超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こし、自分の体の大部分を宇宙空間にまき散らしてしまうのです。かに星雲のこの爆風は現在も秒速1100kmという速さで広がっており、今後もどんどん広がっていくと考えられます。ただし、この爆風は摩擦によって光っており、広がる速度もだんだん下がってきますから、天体はどんどん暗くなっていくことでしょう。

 

さて、かに星雲は星が爆発したものだと申しましたが、ではいつ爆発したのでしょうか?実はその記録が日本に残っているのです。時は鎌倉、藤原定家の日記、『明月記』にその記載があります。明月記は藤原定家の日記というだけでなく歴史書や天文書としての側面も持っており、下の画像は過去の観測記録を藤原定家が編纂したものだそうです。

画像の赤く囲った部分を見ると、「後冷泉院 天喜二年 四月中旬以降 丑時 客星觜参度 見東方 孛天関星 大如歳星」(現代語訳:後冷泉院の時代、旧暦1054年4月下旬の午前2時ごろ、普段見慣れない星がオリオン座の方向、おうし座ゼータ星(3つ前の画像で赤い丸のすぐ下にある星)付近に現れ、木星のような輝きだった。)とあります。いくつか事実と食い違っていると考えられている点はあるようですが、ともかくおよそ1000年前に星が爆発し、非常に明るく輝いたということが分かります。(実際にはかに星雲は地球からおよそ7000光年離れていると考えられているので、その輝きは7000年かけて地球に届いたものといえます。したがって、本当に爆発したのは紀元前6000年ごろでしょうか。)当時は23日間にわたって金星ほどの明るさで昼間でも見えるほど輝き、その後2年間は肉眼で見えていたようです。

 

とても興味深い現象ですが、我々は見ることができないものでしょうか。実は見えるかもしれません。英雄オリオンの右肩、オリオン座のベテルギウスの寿命があとわずかかもしれないということが近年の観測で明らかになりました。ベテルギウスの位置は地球から640光年と、かに星雲よりはるかに近いため、もし私たちの生きている時代と爆発のタイミングが合えば、世紀の天体ショーを目撃することができるでしょう。爆発後はもう今の形のオリオン座を見ることはかないませんが、それと引き換えにしても見てみたいイベントですね。

 

さて、話が少し脱線してしまいましたが、このかに星雲、もっと詳しく見てみたくありませんか?宇宙空間で天体観測を行うハッブル宇宙望遠鏡が撮影したかに星雲がコチラ。

この写真は可視光に加え、紫外線と赤外線の波長も含まれていますので、肉眼では残念ながらこの色合いを見ることはできません。とはいえ、あまりにも複雑に入り組んだガスの網目の美しさは圧巻の一言です。ところで、星雲の中央が白っぽく光っているのが分かるでしょうか。これは超新星爆発の際、中心に残った小さな天体、かにパルサーによるものです。かにパルサーは中性子星という種類の天体で、その名の通り中性子だけでできています。かにパルサーは太陽より重いにもかかわらず、直径は10km程度と想像を絶する高密度な天体で、さらに1秒に30回という猛スピードで回転していると考えられています。このかにパルサーの光は口径50cmの望遠鏡で見ることができるといわれています。なかなか手の出ないスペックですが是非この目で見て、極限的な世界を夢想したいものです。観測に必要な機材としては、双眼鏡でも存在を確認することができます。口径5cmの望遠鏡でぼんやりとした雲が見え始め、20cm程度になると内部の模様が見えてくるようです。機材を持っている、あるいは使える方はぜひ導入して観測してみてください。

 

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。かに星雲の魅力、はたまた宇宙の魅力を少しでも感じていただけたら嬉しいです。それではまた会いましょう。